米国と日本の食事ガイドライン 其の一

栄 養

米国(アメリカ合衆国)と日本の食事ガイドライン(「米国人のための食事ガイドライン (Dietary Guidelines for Americans)」 および 日本の 「食事バランスガイド」・「日本人の食事摂取基準」)は、国民の健康維持・増進や生活習慣病予防を目的に策定されています。

食文化や体質、抱える健康課題(米国は肥満・心臓病、日本は高血圧・過度のやせ・高齢化など)に違いがあるため、共通する理念と相違点が存在します。

1. 共通点(Core Principles)

両国のガイドラインは、最新の栄養科学研究に基づいており、根本的な健康づくりのアプローチにおいて多くの共通点があります。

  • 食品ベース・食習慣(Pattern)全体の重視 特定の単一栄養素(ビタミンCや鉄分など)だけを摂るのではなく、食事全体の組み合わせ(食事パターン)を改善することの重要性を強調しています。
  • 主要な食品グループ(主食・主菜・副菜等)のバランス 穀物、野菜、果物、たんぱく質源、乳製品といったグループをバランスよく組み合わせることを推奨しています。
  • 制限すべき成分の共通性
    • 食塩(ナトリウム): 減塩を強く推奨。
    • 飽和脂肪酸・トランス脂肪酸: 循環器疾患リスク低減のため制限。
    • 添加糖(Added Sugars)/ 砂糖: 肥満や生活習慣病を防ぐため、過剰摂取を抑えるよう指導。
  • エネルギー収支と身体活動(運動)との連携 適正体重を維持するために、「食べる量」だけでなく「体を動かすこと(身体活動)」との一体的な取り組みを促しています。

2. 主な相違点(Key Differences)

食文化や疾病構造の違いから、提示方法や具体的な数値目標に明確な違いが見られます。

項目米国(Dietary Guidelines for Americans)日本(食事バランスガイド/食事摂取基準)
表現方法・ビジュアル「MyPlate(マイプレート)」
ワンプレート(お皿)を4分割し、視覚的に割合を示す。
「コマ(食事バランスガイド)」
倒れないようにバランスよく食べる「コマ」の形で、料理単位(つ・SV)で示す。
主食(炭水化物)の位置づけ全粒穀物(Whole Grains)の重視
穀物の半分以上を全粒粉パンや玄米などにするよう強く推奨。
米(白米・玄米)中心の主食
エネルギー源の基盤として米を中心とした穀類を据える。
たんぱく質源(Protein)赤肉の制限と多様化
赤肉(牛肉・豚肉)や加工肉を控え、豆類・海鮮・ナッツ・鶏肉への代替を推奨。
P/F/Cバランスの重視
魚、肉、大豆・大豆製品、卵などを偏りなくバランスよく摂ることを推奨。
食塩(ナトリウム)の目標値2,300mg/日未満(食塩相当量で約5.8g/日未満)
※全年齢一律でかなり厳しい基準を設定。
男性 7.5g/日未満、女性 6.5g/日未満(18歳以上)
※和食の伝統的な塩分量を考慮し、段階的な目標値を設定。
脂質(Fat)へのアプローチ質の重視(飽和脂肪酸を総エネルギーの10%未満)
無脂肪・低脂肪の乳製品を推奨。
量と質のバランス
目標量として総エネルギーの20〜30%を目安とし、脂質の種類(飽和脂肪酸など)にも言及。
アルコール飲まないことを推奨(飲む場合は男性1日2杯、女性1日1杯まで)
最新版ではより厳しい抑制傾向。
節度ある適度な飲酒
(1日平均純アルコール約20g程度を目安とする)。

3. なぜ違いが生まれるのか?(背景と文脈)

  1. 健康課題(疾病構造)の違い
    • 米国: 重度の肥満、糖尿病、虚血性心疾患(心筋梗塞など)の割合が非常に高いため、カロリー・過剰な脂質・添加糖の削減が最優先課題です。
    • 日本: 肥満率は低いものの、高血圧や脳卒中のリスクが高く、さらに若年女性の痩せ(低体重)や高齢者のフレイル(低栄養)といった多角的な課題に対応する必要があります。
  2. 食文化と調理様式
    • 米国: ワンプレートで完食するスタイルが多く、大皿料理やパン・肉を中心とした食生活。
    • 日本: 一汁三菜(主食・主菜・副菜・汁物)に代表される、個別の器に盛り付ける和食文化。

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